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金属錯体を触媒とする分子造形
金属(触媒)は、様々な電子状態をとることで外部に電子を供与したり、逆に電子を受け取ったりすることが可能です。この性質をうまく利用すると、これまでに見たこともない方法で原子同士をつなぎ合わせることができます。新しい原子のつなぎ方が開発できると、複雑な有機分子を効率的に作ることが実現します。また、金属(触媒)を使うと反応設計が自在にできることから、資源を効率的に使うこともできるようになります。我々は、金属の性質を使いこなすことで、「自在な分子造形法開発」に取り組み教科書に掲載されていない新しい反応開発を目指しています。特に着目している分子群は、医農薬品構造にみられる「立体混雑分子」です。


  • 立体混雑分子の反応化学

立体混雑分子とは?

【分子には立体的なかさ高さがある】
「かさ高い」とは、原子周りの立体的な混雑具合を表す言葉です。例えば、炭素原子であれば、その原子周りに4つまで置換基を持つことができますが、その置換基が大きいと「立体的にかさ高い分子」と表現します。我々はこの「立体的にかさ高い分子」を「混雑分子」と呼んでいます。

図 黄色原子の周りに配置された青色置換基が大きいと「立体的にかさ高い」と言い、をそれを”混雑分子”と呼ぶ

  • 混雑分子の有用性

【混雑分子は天然物や医農薬品にみられる】

分子にはいろいろな機能があります。例えば、天然に存在する分子や医農薬品分子には何らかの生理活性があります。この生理活性を利用することで様々な生理機能を人工的に制御することが可能です。この優れた制御機能を有する分子の発見・開発は、現代の分子化学における最重要課題の一つです。その重要な機能を発現する分子の一つが「混雑分子」です。例えば、炭素原子周りに配置された大きな4つの置換基が、分子の形を規定し、さらに、その分子全体の機能に大きな影響を与える場合もあります。


図 生理活性物質に見られる混雑分子の例

  • 混雑分子の作り方と問題点

    【混雑分子は立体的に作りにくい】

    分子を作るには、一般に、その原料となる分子同士の反応において「電子」効果と「立体」効果を、考慮する必要があります。しかし、原子周りが立体的に混雑した分子「混雑分子」では、その立体効果のため作りにくいことが問題です。置換基同士が大きすぎるためお互いにぶつかって反応しにくくなることが原因です。


    図 混雑分子が持つ大きな青色置換基と反応分子がぶつかるためうまく反応できない

    • 混雑分子が対象の研究とは?

    混雑分子は立体的に大きいことから、様々な研究対象が期待されます。我々が特に着目しているのは次の点です。

    【分子の立体的な混雑さから発現する機能】
    このような観点から我々の研究室では、
    混雑分子を
    「作る」「操る」「使う」、そして「壊す」
    研究をしています。これらの研究を通して新しい分子化学の創成を目指しています。
    詳しくは、各リンク先をご覧ください。

1. 混雑分子を「作る」
2. 混雑分子を「操る」
3. 混雑分子を「使う」
4. 混雑分子を「壊す」