なんでもつくる有機分子合成化学
有機合成のちからを使うと、有機分子をなんでもつくれます。かつて有機分子は、植物、昆虫や動物から採取されており、それが医薬品の機能を持つものであっても、困っている人全員に配ることはできませんでした。しかし、人工的に有機分子合成技術が発展してくると、必要な分子を必要なだけ、適正な価格で利用することができるようになりました。
有機分子は、医薬品、化粧品、天然物、電子材料のみならず身の回りのあらゆるものを構成しています。生命活動だって、有機分子の反応が重要なんです。プラスチックを構成する一つ一つの構成単位だって、有機合成のちからでつくられているのです。この有機合成化学分野は、大変に幅広く、扱う分子の構造的特徴、用いる反応の特徴(遷移金属触媒、イオン、ラジカルなど)によっても細分化されてきます。これら幅広い分野から生み出された化学は、今日のわれわれの生活を支えています。
当研究室では、有機分子の中でも立体的に大変に込み入った分子の合成に挑戦しています。有機合成化学は、電子的な効果と立体的な効果で主には支配されており、どちらかというと後者の制御は難しいです。これは、分子がお互いにぶつかり合うためどうしても物理的に反応を制御することが難しいのです。この問題に対して我々は、ラジカルという化学種の力を使って、立体化学の限界を超えた有機合成法の開発を行っています。
この研究手法により、立体的に込み入った分子をつくり、制御し、時にはその立体的な大きさをつかえる分子設計を行っています。最近では、立体的に大きな化学種は、ラジカル種を安定化させるという効果に着目し、ケミカルリサイクルを指向した分解性プラスチックの研究にも応用しています。
有機化学は、化学の中核を成す学問分野であり、次世代の超機能分子の創出と、その創出プロセスにおける資源・環境問題の解決を両立させる技術開発において、極めて重要な役割を担っています。